日本で働く外国人労働者にとって、日本語能力はキャリアの選択肢を大きく左右する要素の一つです。
「令和5年(2023年)外国人雇用実態調査」の結果によると、外国人労働者の日本語能力には大きなばらつきがあり、日本語が流暢な人ほど高い賃金や安定した職業に就く傾向があります。
では、外国人労働者の日本語能力はどのような分布になっているのか?また、どの職業で日本語スキルが重要視されるのか?本記事では、日本語能力と職業の関係を分析し、スキルアップの重要性や支援策について解説します。
1. 外国人労働者の日本語能力レベルの分布
外国人労働者の日本語能力は、会話能力と読解能力の両面で評価できます。
① 日本語の会話能力
日本語の会話レベル | 割合 |
---|---|
日常的な短い会話ができる | 25.3% |
幅広い話題について自由に会話できる | 16.4% |
会話の場面に応じた言葉を使うことができる | 13.3% |
ほとんど日本語で会話できない | 2.7% |
「日常的な会話ができる」というレベルの人が約25%と最も多いですが、「ほとんど会話できない」という人も2.7%います。
一方で、「幅広い話題について自由に会話できる」レベルに達しているのは16.4%にとどまっています。
② 日本語の読解能力(JLPTレベル)
日本語能力試験(JLPT)レベル | 割合 |
---|---|
N3(一般的な日本語が理解できる) | 20.6% |
N4(基本的な日本語が理解できる) | 17.4% |
N5(簡単な日本語が理解できる) | 18.2% |
ほとんど日本語を読めない | 7.8% |
JLPT(日本語能力試験)のN3レベルを持っている人が最も多く、約2割を占めています。しかし、N4やN5レベルの人も多く、全体としては「簡単な日本語は読めるが、ビジネスレベルには達していない」人が多いことが分かります。
2. 高い日本語能力が求められる職業とは?
日本語のスキルがどの職業で重要になるのかを見てみましょう。
① 高い日本語能力が求められる職業
以下の職業では、日常会話以上の日本語スキルが求められます。
職業 | 求められる日本語能力 |
---|---|
事務職(総務・経理など) | N2以上(ビジネスレベル) |
販売・接客(コンビニ、飲食店など) | N3~N2 |
医療・介護職 | N3~N1 |
通訳・翻訳 | N1(高度な日本語能力) |
特に、日本語での書類作成が求められる事務職や医療・介護職では、N2以上の高い日本語能力が必要になります。
また、接客・販売業では、お客様とのやりとりが頻繁にあるため、N3以上の会話スキルが求められることが多いです。
② 日本語があまり求められない職業
一方で、日本語能力があまり求められない職種もあります。
職業 | 求められる日本語能力 |
---|---|
工場・製造業(組み立て、加工など) | N4~N5 |
建設業(現場作業員) | N4~N5 |
清掃・運搬・梱包 | N5 |
工場や建設現場の仕事では、作業指示が簡単な日本語で伝えられることが多く、N4~N5レベルでも働くことが可能です。
ただし、リーダーや管理職を目指す場合は、日本語能力の向上が不可欠になります。
3. 日本語学習の重要性と支援策
① 日本語能力が高いほど収入もアップ
「令和5年外国人雇用実態調査」の結果をもとに、日本語能力と賃金の関係を分析すると、日本語ができる人ほど給与が高い傾向があることが分かります。
例えば、「専門的・技術的分野」で働く外国人労働者(平均月収285,900円)は、日本語ができる割合が高く、スキルの高い職種に就いているケースが多いです。
逆に、「技能実習」や「特定技能」の労働者(平均月収204,100円~232,600円)は、日本語能力が低い傾向があり、単純労働に従事することが多いため、収入も比較的低くなっています。
② 日本語学習の支援策
日本語スキルを向上させることで、転職やキャリアアップのチャンスが広がります。以下のような支援策を活用すると良いでしょう。
(1) 企業の日本語研修
一部の企業では、外国人労働者向けに日本語学習の研修を提供しています。特に、製造業や介護業界では、日本語研修を受けた労働者がキャリアアップしやすい傾向にあります。
(2) 日本語学校の活用
日本には多くの日本語学校があり、JLPTの試験対策やビジネス日本語の授業を受けることができます。特に、N3以上の資格を取得すると、選べる職種が広がります。
(3) オンライン学習ツール
最近では、スマホやPCを使って学べる**オンライン日本語学習ツール(Duolingo、NHK World、日本語の森など)**も増えています。仕事をしながらでも手軽に学べるため、活用すると良いでしょう。
(4) 地域の無料日本語教室
各自治体では、外国人向けの無料日本語教室を開いていることが多く、地域の日本人と交流しながら日本語を学べます。
4. まとめ
日本語能力は、外国人労働者のキャリアに大きく影響を与えます。
- 高い日本語能力が求められる職業(事務職、販売、介護など)では、N2以上が有利。
- 製造業や建設業ではN4~N5レベルでも働けるが、昇給やキャリアアップには日本語スキルが必要。
- 日本語ができるほど、より高収入の職種に就ける可能性が高い。
日本で長く働きたいと考えるなら、日本語学習は欠かせません。企業の研修や日本語学校、オンライン学習などを活用し、日本語スキルを高めることで、より良いキャリアを築くことができるでしょう。