日本で働く外国人労働者にとって、入国までの費用は決して安くはありません。特に、「技能実習」や「特定技能」の労働者は、母国での紹介会社(送り出し機関)への支払いなど、多額の費用を負担しているケースが多いのが現状です。
さらに、日本に入国した後も、労働環境や契約の不一致、言葉の壁などさまざまなトラブルに直面することが少なくありません。
本記事では、「令和5年外国人雇用実態調査」のデータを基に、外国人労働者が入国までにかかる費用の実態と、就労時に起こりやすいトラブル、そして解決策について詳しく解説します。
1. 外国人労働者の入国費用の実態
外国人労働者が日本で働くためには、ビザ取得費用や渡航費用、紹介会社への手数料など、さまざまな費用が発生します。調査によると、**外国人労働者の入国費用は「20万円以上40万円未満」が最も多く(23.0%)、次いで「20万円未満」(19.2%)、「80万円以上100万円未満」(14.3%)**という結果になっています。
① 入国費用の分布
入国費用 | 割合 |
---|---|
20万円未満 | 19.2% |
20万円以上40万円未満 | 23.0% |
40万円以上60万円未満 | 11.5% |
60万円以上80万円未満 | 12.9% |
80万円以上100万円未満 | 14.3% |
100万円以上 | 19.1% |
特に「100万円以上」の費用を支払った外国人労働者が約2割もいることは注目に値します。この高額な費用の背景には、紹介会社(送り出し機関)の手数料が関係しています。
2. 紹介会社の費用が高額な理由
外国人労働者の多くは、母国の紹介会社や送り出し機関を通じて日本の企業と契約を結びます。しかし、その際に高額な手数料を請求されるケースが少なくありません。
① 紹介会社の手数料
外国人労働者の入職経路をみると、日本以外の国から来た労働者の85.2%が「紹介会社や個人の紹介」を通じて仕事を見つけています。
入職経路(日本国外) | 割合 |
---|---|
出身国の紹介会社・個人 | 51.5% |
日本国内の紹介会社・個人 | 13.5% |
出身国の語学学校 | 9.9% |
出身国のその他機関 | 12.0% |
送り出し機関は、企業と労働者の仲介をする代わりに、以下のような費用を請求します。
- 日本語研修費
- ビザ取得サポート費
- 職業訓練費
- 事務手数料
- 渡航費
特に「技能実習」や「特定技能」の労働者は、これらの費用が合計で数十万円~100万円以上になることがあり、借金をしてまで日本で働くケースも少なくありません。
3. 外国人労働者が直面する就労トラブル
① 就労上のトラブルの発生率
調査によると、外国人労働者の14.4%が「今の仕事でトラブルや困ったことがあった」と回答しています。
② 具体的なトラブル事例
トラブルの内容 | 割合 |
---|---|
紹介会社(送り出し機関)の費用が高かった | 19.6% |
トラブルの相談先がわからなかった | 16.0% |
事前の説明以上に高い日本語能力を求められた | 13.6% |
事前に説明された仕事内容と違った | 9.4% |
事前に仕事内容の説明がなかった | 6.3% |
特に「送り出し機関の費用が高すぎた(19.6%)」という問題が最も多く、事前に説明されていた費用よりも高額な請求を受けたケースが見られます。
また、「仕事内容の説明が不十分だった」「事前説明と異なる条件で働かされた」という問題も多く、労働者が不利益を被るケースが発生しています。
4. トラブルを防ぐための解決策
① 入国前に契約内容をしっかり確認する
外国人労働者が日本で働く前に、契約内容を詳細に確認することが重要です。
- 紹介会社の手数料は適正か?
- 実際の給与額と契約書の内容が一致しているか?
- 仕事内容や労働時間が明確に記載されているか?
これらを確認せずに契約を結ぶと、入国後に「聞いていた話と違う」といったトラブルに巻き込まれる可能性が高まります。
② 労働組合や支援団体を活用する
外国人労働者向けの労働組合や支援団体に相談することで、トラブルを未然に防ぐことができます。例えば、
- 「日本労働組合総連合会(連合)」
- 「外国人技能実習生支援センター」
- 「NPO法人 POSSE」
これらの団体は、外国人労働者が労働条件の改善を求める際にサポートしてくれます。
③ 企業側の対応も重要
企業側も、外国人労働者が安心して働ける環境を提供する責任があります。
- 事前に正確な労働条件を説明する
- 日本語学習のサポートを行う
- 労働トラブル時の相談窓口を設置する
特に、日本語が不自由な外国人労働者に対しては、翻訳ツールを活用したマニュアルの整備や、社内での異文化理解研修を実施することで、トラブルを防ぐことができます。
5. まとめ
外国人労働者の入国費用は、「20万円以上40万円未満」が最も多いものの、100万円以上かかるケースも約2割にのぼります。特に、紹介会社の手数料が高額であり、経済的な負担が大きいことが問題視されています。
また、日本での就労後も、「事前説明と異なる労働条件」「トラブルの相談先がわからない」といった問題が発生しており、外国人労働者にとって働きやすい環境とは言えません。
トラブルを防ぐためには、入国前の契約確認や、労働組合・支援団体の活用が重要です。企業側も、労働者が安心して働ける環境を整備することが求められています。
今後、日本が外国人労働者を受け入れ続けるためには、より透明性の高い雇用システムの確立が不可欠でしょう。