日本で働く外国人労働者の数は年々増加しており、多くの人がより良い労働環境を求めて転職を考えています。しかし、転職によって本当に賃金は上がるのでしょうか?また、どのような要因が成功の鍵となるのでしょうか?
本記事では、「令和5年(2023年)外国人雇用実態調査」のデータを基に、外国人労働者の転職後の賃金変動や成功のポイントについて詳しく解説します。
1. 外国人労働者の転職後の賃金変動データ
外国人労働者が転職した際、賃金がどのように変化するのかを見てみましょう。
① 日本国内での転職
転職前の職場が日本国内だった外国人労働者の約60%が賃金増加を経験しています。
賃金変動 | 割合 |
---|---|
30%以上増加 | 21.4% |
10%以上30%未満増加 | 25.1% |
変わらない | 20.4% |
10%以上30%未満減少 | 13.2% |
30%以上減少 | 7.8% |
つまり、転職者の約半数が10%以上の賃金アップを実現しています。一方で、約16%の人は賃金が下がっていることも分かります。
② 海外からの転職
転職前の職場が日本国外だった外国人労働者の転職後の賃金変動を見てみると、
賃金変動 | 割合 |
---|---|
100%以上増加 | 26.5% |
50%以上100%未満増加 | 24.2% |
30%以上50%未満増加 | 15.4% |
変わらない | 14.3% |
減少 | 9.6% |
海外から日本に転職した場合、**50%以上の賃金アップを経験した人が約50%**もおり、日本国内での転職よりも高い昇給率を示しています。これは、日本の賃金水準が多くの国より高いためと考えられます。
2. 在留資格別の転職状況
外国人労働者の転職事情は、在留資格によって大きく異なります。
① 専門的・技術的分野(技術・人文知識・国際業務など)
- 転職者のうち、約56%が賃金増加を経験。
- 「30%以上増加」(26.8%)、「10%以上30%未満増加」(29.1%)と比較的高い昇給率を示している。
- 転職後の職種も大きく変わらず、ITやエンジニア職での転職が多い。
- 高度なスキルを持つ人材は、企業からのニーズが高いため、待遇アップが見込める。
② 技能実習
- 転職できるケースが限られるため、賃金アップの可能性は低い。
- 10%以上30%未満の賃金減少を経験した人が17.7%と比較的多い。
- 技能実習生は転職の自由が制限されており、企業を変えるには特定の条件を満たす必要がある。
③ 特定技能
- 転職可能なため、賃金増加の割合は高い(特に介護・建設・宿泊業など)。
- ただし、業種が限定されるため、選択肢は少ない。
④ 身分に基づくもの(永住者・日本人の配偶者など)
- 最も自由に転職が可能なカテゴリー。
- **10%以上30%未満の賃金増加が25.6%、30%以上増加が19.1%**と、比較的昇給率が高い。
- 転職を繰り返しながら、より良い待遇を求めるケースが多い。
3. 転職成功のポイントと企業側の対応
① 賃金アップのためのポイント
外国人労働者が転職で賃金アップを成功させるためには、以下のポイントが重要です。
(1) 日本語能力の向上
- 調査によると、「JLPT N3」レベル以上の日本語能力を持つ労働者は、転職後の賃金増加率が高い。
- ビジネスレベルの日本語(N2以上)を取得すると、転職時の選択肢が増える。
- 日本語会話が苦手な場合、業務の幅が限られ、賃金アップが難しくなる。
(2) 専門スキルの向上
- IT、機械工学、医療・介護などの専門知識を持つと、転職成功率が上がる。
- 特に「専門的・技術的分野」の労働者は、プログラミングスキルやエンジニア経験があると高給与の職に就きやすい。
- 資格取得(例:介護福祉士、IT関連資格)が有利に働く。
(3) 信頼できる転職エージェントの利用
- 日本国内の転職エージェントを活用すると、より良い条件での転職が可能。
- 知人・友人の紹介での転職は43.0%と最も多いが、情報が偏ることがあるため、複数の方法で情報収集をすることが重要。
② 企業側の対応
企業が外国人労働者の転職を防ぐためには、以下の対策が必要です。
(1) 給与・待遇の見直し
- 外国人労働者の多くは、日本人と同じ仕事をしているにもかかわらず、給与が低いケースがある。
- 特に技能実習生や特定技能の労働者は、転職によって高待遇の職場を探しやすい。
- 離職を防ぐためには、適正な賃金設定が重要。
(2) キャリアパスの提示
- 「転職しないと昇給できない」と感じる外国人労働者が多い。
- 企業がキャリアアップの道筋を明確に示せば、長期雇用につながる。
(3) 日本語教育の提供
- 日本語能力の向上は、労働者の定着率向上にもつながる。
- 企業が日本語学習のサポートを提供すれば、離職率の低下が期待できる。
4. まとめ
外国人労働者の転職後の賃金変動データを見ると、国内転職では約60%が昇給、海外からの転職では約50%が50%以上の昇給を経験していることが分かりました。特に、専門スキルや日本語能力が高い労働者ほど、より良い待遇を得られる傾向にあります。
一方で、技能実習生は転職の自由が制限されており、賃金が下がるケースも少なくありません。
外国人労働者が転職を成功させるためには、日本語能力の向上や専門スキルの習得が不可欠です。企業側も、適正な給与やキャリアパスの整備を行うことで、優秀な外国人労働者の定着を促進することが求められます。